HOME > 皮下輸液と静脈点滴

輸液(点滴)の目的

まず、輸液(点滴)の意味や役割について。
腎不全では基本的に“脱水”を改善する場合に行われる処置ですが、水分を補給するためだけが目的ではなく下記のような目的もあります。

・排尿を促進して体内のデトックス(毒素排出)を行う。
・電解質の補正や維持。
・ビタミンや薬剤を混合し、栄養状態をなどを改善する。

腎不全で一般的に行われている方法は「皮下輸液」と「静脈点滴」ですが、状況によっては「腹膜透析」や「血液透析」といった処置が行われることもあります。
輸液(点滴)の方法については病状や緊急性以外に性格なども考慮して判断しますし、輸液剤も身体の状態(脱水の内容)により使用する種類が変わります。

尚、“輸液”と“点滴”の違いはというと、“輸液”は「液体を体内に注入する治療法」という広い範囲を差し、輸液剤そのものを輸液という場合もあります。
対して“点滴”は、静脈などの血管に投与する方法の1つを差します。
なので厳密に言うと「皮下点滴」ではなく「皮下輸液」となりますが、言葉の厳密性よりも行為そのものの違いを知っておく程度でよいと思います。



皮下輸液と静脈点滴

腎不全と診断され輸液(点滴)が必要となった場合、一般的には「皮下輸液」や「静脈点滴」により対処します。
ヒト医療で行われている「透析処置」も可能ですが、設備や費用面以外に様々な問題がありますので詳しくは後述します。

【皮下点滴】: 肩甲骨の少し下あたりに翼状針を刺し、皮下に投与します。在宅も可能。
【静脈点滴】: 留置針という針を使い、足や手の静脈から直接投与します。入院で処置。

輸液のサイクル(頻度)や「皮下輸液」と「静脈点滴」の選択については、腎不全の状況や愛猫さんの性格なども考慮します。
ただし、急性腎不全の場合は皮下輸液では対応しきれない場合が多いので、「静脈点滴」や「腹膜・血液透析」などで対応します。

皮下輸液

病院により許可されない場合もありますが、通院だけでなく世話人(飼い主)が自宅で処置することも可能です。
静脈点滴のように血管に直接投与するのではないので専用の機械(自動点滴機)が必要なく、在宅では診察時間や通院ストレスの問題もなくなるので、状況によってはオススメです。

肩甲骨の少し下あたりを指で摘み上げて翼状針という針を刺し、皮下(皮膚と筋肉の間)に輸液を投与します。
投与にかかる時間は静脈に比べると早いのですが、投与後、毛細血管を使いゆっくりと吸収するため、効果があらわれるまで時間がかかります。
輸液の量が多すぎると吸収されずに残ってしまったり、毛細血管に負担をかけてしまいます。

自宅で一人で行う場合、猫さんによっては暴れたり逃走しようとしたりして難しい事もありますが、保護服のようなものを使って出来る場合もあります。
基本的には無理に抑えつけず、出来るだけ穏やかな状態で行う方がいいですが、悪戦苦闘されている方も多いので、輸液を行う場所やタイミングなどを変えてチャレンジしてみて下さい。
下記のリンク先に手作り保護服で輸液を行った方のブログや、「ぎゃおす王国」の輸液ページのURLを載せておきます。

静脈点滴

皮下輸液と違い、自宅で行う事はほぼ不可能です。条件が揃えば病院から機器をお借りして行う事が出来るかもしれませんが、輸液詰まりや機器の不調などに対処できるかどうか考えた場合、やはり病院で行うべきかと思います。
そもそも医療従事者でない一般人が自宅で専用の機器を使って治療をするという行為自体が可能なのかどうか分かりませんので。。。

静脈留置針という樹脂製の針を使って直接血管内に輸液を投与します。
直接投与しますので即効性があり、静脈からでなければ投与できない薬にも適してますので、緊急時には特に必要な処置となりますが、静脈点滴は全日入院か半日入院が必要になる場合が多く、費用や時間のデメリットがあります。

静脈に設置した留置針は毎回外す必要はなく、数日間は設置したままの状態にしておきます。
通常、静脈点滴が必要な状態というのは、血液検査で数値が異常なほど高くて緊急な処置が必要な場合がほとんどです。なので、最低でも3〜5日程度の入院が必要になり、それでも数値が下がりきらない場合は、通院での半日入院か皮下輸液をしばらく続ける必要があります。

関連リンク

・一人で出来た 猫に点滴  凛のブログ 皮下輸液用の保護服
・自宅で皮下輸液  ぎゃおす王国の皮下輸液ページ
・効果的な皮下輸液療法とは  日本ベッツグループのHP

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