HOME > 腹膜透析と血液透析

透析について

皮下輸液や静脈点滴に比べると一般的ではないですが、動物医療でもヒト医療で行われている『透析』という処置があります。
慢性腎不全における腹膜透析や血液透析の考え方は獣医師によって異なる場合もあり、積極的に行っている病院もあれば、消極的な病院もあります。

基本的には急性腎不全や毒物・薬品などによる中毒に対して行う場合がほとんどで、慢性腎不全ではあまり適応されていないのが現状です。
しかし、獣医師によっては中期(ステージU〜V)における急激な悪化時期の場合に透析を行う事で、症状を緩和したり回復したり出来ることもあるという考えもあります。

実際に慢性腎不全で腹膜透析を行っていた猫さんもいますが、治療効果よりも費用や労力の問題などから治療の選択肢に選ばれていないのが現状かもしれません。
特に血液透析になると、透析器(ダイアライザー)自体が高額になるために導入されていない動物病院の方が多いので、導入している病院を探す事自体が困難になるかもしれません。



腹膜透析と血液透析

透析には「腹膜透析」と「血液透析」とがあります。
透析とはあくまでも腎機能の代行であり腎臓を治療する処置ではありませんが、状況によっては無尿状態を回避出来たり、通常の輸液・点滴で改善されない場合に効果が見られることもある処置です。

腹膜透析

腹膜透析とは簡単に言うと、『お腹の中に透析液を注入し、毒素を吸着した透析液を再び回収する』という方法。

@まずは手術により透析液を注入する為の「CAPDカテーテル」を設置します。
Aカテーテル設置後、腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留したままにする。
B約1時間前後経過した時点で注入した透析液を回収する。
C上記のA及びBの処置を状況に応じて1日に1回〜数回繰り返す。

血液透析と違い透析機が必要ないので、基本的にはどの病院でも行う事が出来る処置かと思いますが、実際には腎不全に対する考え方や病気の進行状況、費用等の面から行わない獣医師が多いかもしれません。
腹膜透析の是非はともかく、状況によっては大変有効な処置なので、主治医先生の考え方も含めて予備知識として聞いておいてもいいと思います。

もう少し詳しく書くと。。。
注入した透析液と体液の浸透圧の違いを利用して毒素を透析液側に引き込みます。
体液よりも透析液の方が浸透圧が高い(濃度が高い)ので毒素を回収出来ます。
透析液自体が腎臓の肩代わりをしているようなイメージでいいと思います。

【 デメリット 】

・透析液には糖が多く含まれるので、インスリンが必要な糖尿病の場合には難しい。
・カテーテルは設置したままにしておくので保護服などの着用が必要になる。
・カテーテル設置による感染症や腹膜炎の恐れがある。

【 メリット 】

・状況にもよりますが、皮下や静脈に比べて状態や数値が飛躍的に改善する。
・尿毒症が改善されれば透析回数を減らす事が出来、結果的にQOLの向上も。
・終末期ではなく、ある程度早い段階で透析を開始する事で残存腎機能を保護出来る。

細かく書けばメリット・デメリットなどは無数にありますが、一番重要な事は、単純に、一時的に数値を下げたいという事ではなく、今後のQOLが向上するかどうかだと思います。

あくまでも個人的な意見ですが、何もしなければ“数日の命”である場合、腹膜透析を行う事で半年や1年といった期間を生きる事が出来るのであれば、“延命”ではなく“治療”とも言えるのかな。。。って思います。
ぐったりして尿が出なくなり、終末期と判断された子が腹膜透析により回復した場合もありますし、尿管結石などによる水腎症から結石除去手術を行った際、術後に腹膜透析を併用する事で回復する可能性も高まります。
もちろん、終末期に腹膜透析を行っても間に合わずに旅立ってしまう子もいます。
どうする事が正解かは個体差や状況にもよりますし、考え方にもよりますので一概に言えませんが、ベストな判断と処置により、一命を取り止めたりQOLを向上させたり出来ることもあると思います。

また、“ユリの花”や“アイスパック等のエチレングリコール”による中毒から急性腎不全になった場合、催吐処置の他にエタノールやフォメピゾールを静脈注射して治療しますが、静脈点滴でも対応しきれない事が多いので、腹膜透析や血液透析で対処する場合もあります。

血液透析


関連リンク

・腹膜透析に関する情報  ベルジェ藤が丘動物病院
・小動物血液透析装置「NCU-A」  動物医療器具メーカー リーフインターナショナル
・腎臓病専門病院の血液透析の紹介  メディカル茜動物クリニック
・動物に透析ができるの?  Animal Care-Hosptal ALOHA

▲ページトップに戻る