腎不全での療法食などのフード選び
腎不全に限らず、健康な猫さんにとっても気になるのが「フード」です。
病気になると制限しなければならない成分などもあり、何が一番いいのか悩みますよね。
ドライフードやウェットフード等にもレギュラーフードやプレミアムフード、ナチュラルフードといった分類があり、さらに手作り食などゴハン選びは種類が多すぎて大変です。
結局、何が一番良くて、どんな選び方がいいのか?
正直なところ・・・まったく分かりません。
結論から言うと、フードの成分やその比率以外に年齢や個体差、腎不全ステージや腎不全以外の疾患、アレルギー等の有無により変わってきますし、猫さん自身の好みもあるでしょう。
そもそも、フードに正解を求める方が無理があるように思いますが。。。
考えれば考えるほど分からなくなるのがフードです。
そう言ってしまうと身も蓋もないので、あくまでも一般論や基本的な考え方について書いていきます。
つきつめて考えると、愛猫さんの状態を基本に成分やカロリーを計算して手作り食を数種類用意し、バランスが偏らないようにローテーションしながら与え、足りないビタミンやミネラルなどはサプリで補う事を完璧に行う事が理想なのでしょうが、現実ではかなり無理がありますので市販のフードで考えていきます。
また、着色料や甘味料などの本来必要ではない添加物は使用していない事を前提にしますが、酸化防止剤に関しては個々の世話人の考えも大きく違いがありますので賛否に関しては触れないようにします。
AAFCO? 分析値? - パッケージの見方
ごはん選びについては世話人の考え方が大きく関わってきますが、考え方以前にフードのパッケージに書いてある内容を簡単にでも理解できるようになっておいた方がいいですよね。
知らないよりも知っている方が何かと得しますので。
詳しくは別ページにて書きますので、ここでは簡単に。
【 AAFCO(米国飼料検査官協会) 】
「アーフコ」とか「アフコ」って読みます。
1909年にアメリカで設立された公的な性格のある組織。ペット関連企業では無く政府管轄の協会です。ペットフードの栄養や表示に関する基準などのガイドラインを設定しており、『AAFCO(栄養)基準』は日本のペットフード公正取引協議会でも採用している基準です。
ただし、この基準はあくまでも最低基準であり、この基準をクリアしていれば問題が無い訳ではないので、フード選びにおいての目安の1つ程度として捉えれば良いかと思います。
尚、AAFCOでは栄養基準を設定していますが、個々のメーカーの製品に対する検査などはしていません。
なので『AAFCO承認済』や『AAFCO検査済』といった、あたかもAAFCOの検査をクリアしたような表記をしているフードは逆に胡散臭いフードと考えても良いかと思います。
AAFCO自体が個々のフードの検査をする訳ではなく、あくまでも栄養基準を公表しているにすぎないからです。
『AAFCO(栄養)基準をクリア』などの表記が正しい記載方法です。
また、AAFCO(米国飼料検査官協会)以外にNRC(国立研究審議会)という組織もあります。
【 成分表の原材料や分析値 】
フードの袋の横や後ろに書いてある原材料は、そのフードに最も多く含まれる材料順に書かれています。
どの原材料を主体にしたフードなのかを知るために必要な項目ですし、添加物の有無なども知ることが出来ます。
「粗蛋白○○%、粗脂肪△△%」といった、各成分の割合を書いたものが分析値です。
詳しくは別ページにて書きますが、分析値には「乾物量分析値」と「保証分析値」とがあり、一般的には「保証分析値」を記したパッケージが多いかもしれません。
ちなみに、「粗○○」の「粗」という言葉は簡単に言うと「ほぼ○○」といった意味です。
フードの種類と考え方
以前に比べて腎不全の療法食が増えましたが、各フードをよく見てみると微妙に成分バランスが違っていますし、療法食以外にも療法食に近い成分のフードも多々あります。
基本は蛋白質とリン・マグネシウム・ナトリウムを抑えた製品ですが、腎不全のステージや状態によっては蛋白質を抑えすぎない方が良いといった考え方もあります。
厳密に言うと、「低たんぱく」というより「適たんぱく」といった方が正解でしょうね。
食事の考え方
腎不全の場合、腎臓の負担を軽くしてあげる必要から低タンパク食による食事療法で対応するのが一般的な考え方です。
ただし、腎不全のステージの違いや個体差などの他、原因が特定出来ない場合や単純な老化による慢性腎臓病の場合も多いので、腎不全と診断されたからといって全て同じ食事療法で良いかは専門家でも意見が分かれる部分です。
ある程度のタンパク制限は必要になってきますが、やみくもに制限するのは逆効果かも。
タンパク質の過剰摂取や健康な若猫と同じような含有量では負担にになりますが、神経質になりすぎない事が重要で、必要最低限のカロリーを摂取して痩せさせないことも重要ですね。
ここ数年は、タンパク制限をする事に対して疑問視する専門家も多くなってきていますし、実際にはよく分かっていないのが現状のようです。
特に腎不全初期の子や仔猫に療法食を与えるのはNGとする考え方は少しづつ浸透してきているように感じます。
また、腎不全の療法食は美味しいものが少ないようで、継続して食べ続けてくれないことも多々ありますし、そもそもアレルギー等で療法食自体を食べられない子もいます。
腎不全だから療法食じゃないとダメ!ではありませんので、まずは痩せさせない事を基本に、タンパク質だけでなく“リン”の制限・コントロールも考えた方がいいと思います。
腎不全の数値だけで判断するのではなく、体質や年齢なども考慮しなければならないのが難しいところですが、総合的に判断することが最終的にQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながるかもしれませんね。
フードの種類
腎不全の状況によって尿毒症や口内炎などで自ら食事が出来なくなることも多々あります。
本来、腎不全では少しでも多くの水分を摂取したいのでウェットフードが良いのかもしれませんが、治療費なども考えるとドライフードの方が経済的ですし、実際にはドライフードを与えている方が多いと思います。
ドライやウェット以前に、自分で食べられない状態では流動食の強制給仕という選択を迫られる場合もあります。
長いお付き合いになる腎不全ですので、食事以外の通院費やお薬・サプリなどの費用も考えなければなりませんし、進行状況によっては日々状態が変わって食事にムラが出て来ることも多々あります。
下記、「どれが正解か?」ではなく、世話人の考え方や愛猫さんの状況を踏まえながら参考にしてみて下さいね。
【 療法食や蛋白質を少し抑えたフード 】動物病院などで取り扱いの多いロイヤルカナンやヒルズ以外にも腎不全用療法食を出しているメーカーはあります。
フィッシュとチキンなどの味の違いも含めると“12種類”程度発売されていますが、療法食といってもメーカーにより蛋白質やリンの含有量、カロリーなどに微妙な違いがあります。
また、療法食以外の蛋白質を抑えたフードは主に高齢猫用になります。
いずれも低タンパクが基本ですが、そもそも蛋白質を抑える理由はなんなんでしょうか?
簡単に言うと、タンパク質とはアミノ酸の化合物です。
このアミノ酸が体内で分解・吸収される際にアンモニアが生成され、結果的に尿素となってしまいます。尿素生成を抑えるためにタンパク質をある程度制限するというのが療法食や高齢用の基本的な考えの1つです。
商品名 | タンパク質 | 脂質 | リン | ナトリウム | エネルギー |
---|---|---|---|---|---|
腎臓サポート | 21.00 | 15.00 | 0.32 | 0.24 | 395kcal |
腎臓サポートSP | 24.00 | 15.00 | 0.43 | 0.35 | 392kcal |
ヒルズ k/d | 24.00 | 19.00 | 0.65 | 0.30 | 413kcal |
アニモンダ 腎臓ケア | 22.00 | 23.00 | 0.35 | 0.20 | 407kcal |
スペシフィック FKD | 20.30 | 21.90 | 0.42 | 0.19 | 456kcal |
キドニーケア (チキン) | 24.00 | 20.00 | 0.30 | 0.20 | 414kcal |
キドニーケア (フィッシュ) | 25.57 | 22.39 | 0.48 | 0.29 | 414kcal |
猫用 Kアシスト | 27.00 | 22.00 | ? | ? | 411kcal |
腎ケア | 27.00 | 15.00 | 0.50 | 0.35 | 370kcal |
リーナルアクティブ | 27.40 | 19.50 | 0.49 | 0.15 | 392kcal |
キドニーキープ | 24.00 | 12.00 | 0.50 | 0.25 | 360kcal |
ダイエットニーレ | 24.00 | 20.00 | 0.45 | 0.20 | 415kcal |
上の表のように、主要成分だけを比べてみると療法食といっても結構違いがありますよね。
ビタミンとミネラルを除いた、炭水化物・タンパク質・脂肪を『三大栄養』といいますが、腎不全ではこのうちの1つであるタンパク質を制限しています。
という事は、炭水化物と脂肪から栄養を補うように考えられているので、リンの数値以外に脂肪(脂質)の数値とカロリーが気になるところです。
標準(理想)体重で食事ムラが無ければいいですが、食事量が減って痩せてきている状態で脂質とエネルギーが低いフードを食べるのはどうなんでしょう?
逆に脂質代謝異常などで糖尿病の危険性があれば中性脂肪やコレステロール値が高い場合があり、脂質やエネルギーが高い療法食を長期間食べさせ続けても良いのか?
あるいは肥満ぎみの子の原因が炭水化物である事もあるかも知れません。その場合、タンパク質と脂質の両方を抑えた炭水化物を多く含むフードでもいいのかな?
正直、つきつめて考えると不安が広がるだけで答えが出せなくなってしまいますし、そもそも猫さんの好みの問題もありますので合併症や大きな血液検査数値の逸脱が無ければ、まずは猫さんの“好み”で選んでもいいかもしれません。
ただし、愛猫さんの状態を考慮せずにタンパク質制限だけに拘り、なにがなんでも1種類の療法食を与え続けることはナンセンスな気がします。
長期間食べても問題は無いというメーカーもあれば、療法食は長期間を想定しているのではないというメーカーもあります。
何が正解かは分かりませんが、厳密に言うと『療法食ならどれも同じ』ではないように思いますので、状態に合わせて種類を変えたり、吸着剤などのサプリを併用したりする工夫が必要ですね。
ページ上部のヘッダーメニューにある「フードあれこれ」をクリックすると療法食のページへ飛べますので、成分数値などはそのページで確認して下さい。もっと詳しく数値を確認したい場合は、各メーカーリンクをクリックして頂くか、『ぎゃおす王国』の「フードコート」のページをご覧頂ければと思います。
【 療法食以外のフード 】
【 強制給仕での流動食 】
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