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腎不全の検査について

検査の意味

慢性腎不全の確定診断をするための検査や、病気の進行状況を把握するための検査、腎不全を引き起こしている原因を調べるための検査など、検査といってもいろいろあります。
全ての検査が必要という訳ではないですが、ある程度状態を把握して適切な処置をするためには血液検査だけでは不十分な場合がほとんどです。

体調が悪くなって病院に行った場合や腎不全の治療期間中に突然悪化した場合など、身体に負担がかかるために出来ない検査もありますので、少しでも体力のあるうちに検査をすることも必要ですね。
血液検査もせずに経験や勘だけで診断し、不適切な処置をされて悪化してしまう猫さんも少なくありませんから。。。やはり最初が肝心です。

もちろん闇雲に検査をするのはナンセンスですし、猫さんの身体だけでなくお財布にも優しくありませんので、状況に合わせて検査をチョイスすればいいと思います。

検査を受ける前に

突然体調が悪くなった場合は別として、健康診断目的などの場合には、夜から絶食をして朝から病院に行った方がいいですね。
もちろん、一刻を争う場合もありますので、明らかに元気がない時はスグに病院です。その場合もなるべくなら午前中に行き、必要であれば夜まで預かってもらって下さい。
時間がない場合は仕方がありませんが、夜から病院に行くと、入院となった場合に無人の病院に入院させる事になることもありますから。

また、「検査が身体に負担」や「通院がストレス」などの理由から検査をしなかったり、ひどい場合は病院すら行かない方もいます。中にはろくな検査もせず、通院して何日も経過してからやっと血液検査をする最悪な獣医師もいます。
検査をせずに「様子を見る」ような対応だけは避けたいものです。



検査の種類(基本編)

身体検査

腎不全に限らず診察の際に必要な検査です。

・触診 : 腎臓の大きさや硬さ以外に、身体のシコリなどの有無が見つかる場合もあります。
・体温 : 平熱は38〜39度程度。年齢などにより少し低い子もいます。39度以上は熱あり。
・聴診 : 雑音の有無を確認しますが、雑音が聞こえない場合もあるので信頼性は低いかも。
・体重 : 健康管理において増減を知る程度でしょうか。太りすぎや痩せすぎは注意ですね。
・眼口 : 必要であれば。口内炎や歯肉炎、特に眼の病気は気付かない場合が多いようです。

基本の検査


【血液検査】

最低限必要な検査の1つです。
目的により検査項目は変わりますが、まず最初はある程度の項目をした方がいいと思います。
いくつかの項目を照らし合わせて総合的に判断しますので、検査項目が少なすぎると単純に数値を知るだけで終わってしまいますから。
血液検査には多くの項目がありますが、大きく分けると『血液学的検査』『血液化学検査』の2つに分けることが出来ます。

血液学的検査 : CBC検査ともいい、主に赤血球や白血球についての検査項目です。
血液化学検査 : 生化学検査ともいい、血液に含まれる様々な成分についての検査項目。

腎不全と診断されてから定期的に行う血液検査では、ある程度項目を絞って検査します。
状況に応じて血液学的検査から数項目と、血液化学検査から5〜10項目程度でしょうか。

獣医さんによっては「数値が分かったところで処置は同じ」という理由から、ほとんど検査をしない方や項目数を極端に少なくする方がいます。
もちろん元気が一番ですし、数値に振り回されてはいけませんが、元気なのに数値は上昇している場合もあり、ちょっとした工夫で数値が下がる事もあります。

BUNやCre以外に、iP(リン)、Na・K・Cl(ナトリウム・カリウム・クロール)などの電解質、TP(総タンパク質)、ALB(アルブミン)、Ca(カルシウム)も定期的に検査して状態を把握してもいいと思います。あとは、たまには肝臓に関係する項目も調べておいた方が安心できるかもしれませんね。

ただし!これは慢性腎不全と確定診断されてからの話であり、慢性腎不全と確定診断するためには血液検査だけでは無理がありますので、尿検査などと合わせて診断してくださいね。
BUNやCreの値が急激に大きく上昇している場合は急性腎不全としての対処が必要になりますが、慢性腎不全では血液検査に現れるのはある程度進行してからです。
数値が基準値ギリギリや微妙に高い場合などは、他の疾患が原因である場合もありますし、数値には現れない程度で進行している事も少なくありませんから。

【尿検査】

上記の血液検査と合わせて行う尿検査にも複数の項目があります。
一般的な尿検査の項目の中で特に腎不全で注目するのは下記の通りです。

・蛋白質 : 尿中に蛋白が漏れ出す原因の1つに腎機能の低下があります。
・尿比重 : 尿の濃縮機能を測ります。簡単に言うと濃いか薄いかを調べます。
・尿沈渣 : 尿を遠心分離し、沈殿物を調べます。腎疾患では尿円柱を調べます。

腎機能が徐々に低下している場合、血液検査に数値として現れるのはある程度進行した状態です。諸説ありますが、大体70%前後の腎機能低下が目安となります。
尿石症などによる急性腎不全の場合は別として、慢性的に腎臓の機能が低下している場合は、血液検査による腎不全の早期発見は不可能です。
しかし尿検査を行うことによって、血液検査に現れる前に腎不全を発見出来る事も少なくありません。

また、尿に含まれる成分や数値から原因を推測できたり他の疾患の可能性も探ることが出来ますので、腎不全の確定診断には血液検査と尿検査はセットでおこなった方が良いと思います。

上記の尿検査は一般的に動物病院で行っている検査ですが、より正確に進行状況を把握したい場合や、確実な確定診断を希望する場合には別の検査もあります。
UPC(尿蛋白/クレアチニン比)と、UAC(尿アルブミン/クレアチニン比)という検査です。
UPCやUACは必ず行わなければならない検査ではありませんが、状況に応じて獣医さんとご相談のうえ行ってください。

また、尿検査の検査結果については、採尿方法やタイミングなどの様々な要素から数値が変動しますので、1回ではなく複数回行った検査結果を総合的に判断する必要があります。


キーワード

・血液学的検査
・血液化学検査
・UPC(尿蛋白/クレアチニン比)
・UAC(尿アルブミン/クレアチニン比)

関連リンク

・日本ベェツグループ Dr. 小宮山の伴侶動物へのやさしい(優しい)獣医学

詳しい検査

上記の血液検査や尿検査といった基本的な検査では、“状態”を知る事は出来ても“原因”を知る事は出来ない場合が多々あります。
腎不全という“状態”を知るだけでなく、出来れば腎不全の“原因”も知っておきたいものです。

もちろん、必ず原因が分かるとは限りませんが、原因を知る事で対処が違ってきたり、思い込みによる誤診も減らす事ができるかもしれませんからね。
病気だけでなく全ての事象には“原因”があります。
原因が“無い”のではなく“分からない”のです。
しかし、原因を“分かろう”としないだけで、検査をすれば“分かる”こともあります。
世話人(飼い主)や獣医師の考え方にもよりますが、原因を知る事が出来れば何かが変わることだってあるかもしれません。

腎不全の原因や別の疾患の可能性など、より深く追求する為の血液検査や尿検査以外の検査については、サイドメニューの『検査と処置 A』にて説明していきます。


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